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サルトルと道徳思想(1)

 こんなに私にとってドンピシャな題名の記事を書くことは率直に怖いですね。この記事では私なりの再構成を勝手に行っているので、既存のサルトルのモラル論解釈を知りたい方は、アラン・ルノー『サルトル、最後の哲学者』(水野浩二訳)の「第三部 不可能な倫理」と、水野浩二『サルトルの倫理思想』をご覧ください。とくに前者は、紹介している頁数自体は短いのですが、サルトルの倫理思想の格好のレジュメがありますので一読の価値はあると思います。既存の学説を知りたい人はそちらをご覧いただくことにして、そして勝手な話を聞くのは不愉快だという人には右上の×を押していただくことにしましょう。ここから先は私の半分妄想のようなハナシ&断片的覚書(Arno Münster, Sartre et la moraleより)ですので。

  * * *

 サルトルの倫理思想は通常三つに分けられ、それぞれ「第一の倫理学」「第二の倫理学」「第三の倫理学」と呼ばれる。

A.)「第一の倫理学」──本来性のモラル(39?~?)
 a) 『存在と無』──人間存在の存在論的探究。来るべきモラルへの土台。
 b) 『文学とは何か』──自由への呼びかけ(ジェネロジテ)。相互承認による「目的の王国」の夢。Mit-seinの探求。
 c) 『倫理学ノート』☆──抑圧から革命へ。歴史と普遍の綜合としての具体的普遍の創造。
 d) 『聖ジュネ』──神なき楽天主義。人間的聖性の探求。存在論レベルでの抑圧から、存在論レベルでの勝利。「負けるが勝ち」(Qui perd gagne)
 e) 『言葉』──聖性への拒否。本来性のモラルの放棄?
 f) 『家の馬鹿息子』──年代的にはB~Cの中間点にあるのだが探究自体としてはここに入ると思う。

B.)「第二の倫理学」──社会主義のためのモラル(60~64年?)
 a) 『弁証法的理性批判』
 b) 「ローマ講演」☆

C.)「第三の倫理学」──他者のためのモラル(79?~80年)
 a) 『いま、希望とは』(avec ベニ・レヴィ)☆──対話の複数的思考。「世界-内-存在」には、まず「世界」との、他者との出会いがある。存在論に先行する倫理学。「人類みな兄弟」という神話的思考。
 b) 『権力と自由』(par ベニ・レヴィ)


 今日は、A.の「第一の倫理学」を扱う。☆をつけたのは、中核になるもの。はじめに言っておくと、第二、第三は通常の学説通りだけど、「第一の倫理学」は狭義では『倫理学ノート』一本にされてしまいます。しかし、私は少なくとも『聖ジュネ』はここに入れるべきだと思うし──と考えると、こういうラインナップになってしまったわけですが、この是非については回を重ねていく時に微修正を入れていきながら考えていこうと思う。

 問題点は、1)自由な選択と存在論はいかなる関係をもっているか、2)そしてその関係は非本来的実存と自由の倫理の問題とどのようにつながるのか、の二点である。これは、すなわち間主観性の領域に入っていくことを意味する。

 具体的普遍──歴史的状況の中で見つける人間的なものの一体性。実存的存在論は歴史的である。

 アランのStyle論との類似──というか、『嘔吐』の中に出て来るミシュレの完璧性もか。

 宗教的倫理の否定(『倫理学ノート』から『聖ジュネ』における聖テレーズ批判まで)。すなわち、宗教的倫理は歴史的ではない上に、ドクマティックに自己正当化する倫理的原理であるのでは?(→「聖性」の誕生については『聖ジュネ』参照)サルトルの倫理を、私は「神なき楽天主義」と要約したい。

 カントへの反論。定式的で、物自体的な倫理への批判。(『実存主義とは何か』、『倫理学ノート』参照)

 存在論のサイクル性と、互酬的なエコノミー。(ベニ・レヴィが言うように、「他者」がやってくることは第一の倫理学において存在するのか検証すべし)

 「私の場所」とêtre-làということ。(『存在と無』第四部参照)

 「意識の場所」とは……? 空無。(→男性中心主義?)

「第一の倫理学」への有名な反応)

1)Francis Jeanson, Le problème moral et la pensée de Sartre 状況から人間は行動する。行動は自身の行う選択につねに送り返される。「自分の道を発見せねばならぬ、それは自分自身を自分で発見することであり、自由におのれを選ぶことでもある」
2)Simone de Beauvoir, L'ambiguïté de la morale 簡明な要約。
3)André Gorz, Fondements pour une Morale (完全に未読)

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